■ 100.「端書28」

LastUpdate:2009/04/10 初出:YURI-sis

(何が、あったのだろう)
 殆ど訝しい気持ちで、アリスはそう思わずにいられなかった。
 これまではどこか受け身にアリスの想いを受け止めてくれるだけでしかなかったパチュリーが、今日だけはこんなにも積極的に、そして貪欲にアリスを求めてきてくれること。それはもちろん嬉しいことなんだけれど……なんだか彼女らしくない気がして、アリスは落ち着かない。
 きっと、誰かに焚きつけられたのだろうか。館の住人か、それとも魔理沙か。それが誰かは判らないけれど、誰とも知れない誰かに心の中でアリスは感謝する。落ち着かないながら、それでもやっぱり愛する人がこうにも積極的に自分を求めてきてくれる姿は――刺激的だった。
 不慣れな口吻け、不慣れな愛撫。それは時に擽ったさばかりを掻き立てて、アリスの躰に複雑な感覚を残していったりもするけれど。それでも……愛している人が与えてくれる物だと思えば、拙いながらもやっぱり嬉しいことでしかない。相手を導こうとするプロセスが感じられない愛撫。感情的に貪るばかりの指遣いも、けれどパチュリーの心の儘の求められ方なのだと思えば、嫌な思いひとつさえアリスには感じられなかった。

 

「アリスぅ、アリスっ……!」
「ふぁ……!」

 

 感情的な儘の無骨な愛撫であっても、そこに宿る思いは何よりも真摯なもので。それだけに、パチュリーの想いはアリスの心を撃つし、拙いながらも指遣いは躰と心の欲情を高めさせていく。むず痒くて僅かに辛い愛撫の雨が肌に降り積み、彼女なりの愛され方に少しずつ躰が慣らされていくかのような、不思議な感覚があった。

 

「ふああああっ……!」

 

 加減を知らない指先に。ショーツの上からクロッチの部分を撫でられるだけでも、甘い痺れがアリスの躰の裡を駆け抜ける。
 パチュリーなりの不器用な愛され方だからこそ、余計に彼女の証を躰に刻みつけられる想いがして。そんなことにさえ、アリスは途方もない倖せを感じているのだった。