■ 16.「素敵な生活」

LastUpdate:2009/01/16 初出:YURI-sis

 ごく僅かに酸味の残る、無機質な味。けれどそれさえ天子が自分のことを受け入れて、感じてくれた蜜なのだと思えば嘸なげにも甘い。アリスの嗜好さえも蕩けさせようとするその匂いの甘さにもまた、幾重にも情欲が掻き立てられてしまって。
 頭の芯までがいやらしい気持ちでいっぱいになる。アリスはその愛欲を、ただ舌の愛撫だけで求めていく。繊細な舌遣いで追い詰めるように責めては、時折ただ貪るかのように荒々しくも舌先で天子の秘所を責め立ててみたりもする。

 

「ゃ、はぁん……!! も、ぉっ……!」

 

 緊張と共に切迫した雰囲気が、天子の上げる嬌声の色に混じり始めると、アリスは余計に自分の衝動を抑えきれなくなってしまう。声色に追い詰められている様子を感じることができるのは、天子がアリスの舌による愛撫に感じてくれていて、そして導かれようとしてくれている何よりの証だから。アリスにとってそれが嬉しくないはずが無くて、衝動はより粘質な舌先の愛撫という形で天子の中に返されていく。
 華奢な天子の躰が小さく震える。彼女の細い両脚に顔を挟まれる格好のアリスには、その小さな震えも違うことなく伝わってきて。きゅうっと身を窄めるかのように両脚が軽く顔を圧迫してくる圧力感さえ、どこか心地良いようにさえ感じられてしまう。

 

「あぅうっ! は、ああああああっ……!!」

 

 まるでギターの弦のように張り詰めた声。彼女が上げる嬌声の音程は高く、嬌声が奏でるトレモロの酩酊は密やかにアリスの心へと響いてくるみたいで。幾たびも上がる悩ましげな声がアリスの脳に鈍い痺れを覚えさせてきて、その度に天子にどんどん惹かれずにはいられない自分を、感じてさえいた。
 一際高く天子の上がった絶頂の声とともに、蒸れるような匂いを纏わせながらアリスの顔に幾つもの熱い飛沫が飛びついてくる。穢い、だなんてことは微塵も思わない。自分の顔に掛かった天子の蜜さえ愛おしく、その幾つかを指先ですくって舐め取ってみる。――不思議と、甘い味がするようにさえ感じられた。

 

「――ふぁっ!?」

 

 緩やかな律動と共に弛緩しようとする彼女を、けれどアリスの舌は許さない。膣口ばかりを繰り返し責められることによって鋭敏さだけを増し続けていた場所、包皮から僅かに顔を出している陰核へとキスをするかのようにアリスが軽くだけ舌の先でちょんと触れると、疲れ切っていたはずの天子の躰が大きく震えるように跳ね上がった。

 

「な、なに、を……?」

 

 上体を起こして、怯えるような瞳でこちらを見つめてくる瞳。
 けれど――天子の怯える目つきの深みに、僅かばかりの期待が混じっていることを、アリスは見逃さない。

 

「ふふ、解っている癖に」
「ぇ、ぁ。――んぅっ!?」

 

 ちょんちょんと幾度か突くと、天子の陰核が僅かに膨らんでそれに答えてくれる。舌の先で器用に捲るようにそこを包む包皮を除いていくと、可愛らしい彼女の膨らみが完全に露わになった。