■ 41.「微熱」
それから霊夢に肩を貸している間も、ずっと胸が高鳴りっぱなしだった。霊夢の身体をちゃんと支えてやらないといけないのに、あまりの緊張で魔理沙の足元もどこか覚束なくて。何度か二人して蹌踉けてしまいながらも、どうにか二人でトイレの傍にまで辿り着く。
当たり前だけれど、本来ならひとりで利用する為の個室だから。霊夢と魔理沙、二人で一緒に入るとどうしても狭くって、身体と身体とが触れあってしまう。服越しに感じられる霊夢の体温が妙にリアルで、これからすることを思う程、頭がかぁーっと熱くなって何も考えられなくなってしまう。
「魔理沙」
「……お、応っ」
「もしも嫌だったら……私に遠慮せずに、外で待っていてくれていいのよ?」
それは、さも当然のような口調で霊夢の口から零れ出て。……なればこそ、言われて魔理沙は頭をぶん殴られるような思いだった。大変なのは霊夢で、自分はそれを手伝いしてやるだけの立場なのに、逆に心配されているのでは意味がない。
ぶんぶんと魔理沙は頭を強く振って、雑念を払うようにする。――もちろん、そんなことで払えるはずもないのだけれど。
「……私のことはいいんだ。嫌だなんて、絶対に思ってないから」
「本当に?」
「ああ。寧ろ、役得のように思ってる。……色々と、霊夢の身体に興味が無いって言ったら、嘘になるからな」
魔理沙の言葉に、今度は霊夢の顔に差す紅が僅かに色濃くなる。
「ただ、その……お前こそ、いいのか?」
「お願いしているのは私でしょう?」
「い、いや、それはそうなんだが。だって私に……色々と見られるんだぜ?」
言ってから、発してしまった自分の言葉に、魔理沙の方まで恥ずかしくなってしまう。
頬が熱を持つ。こんな身近な距離で、寄り添い合う身体同士の熱が深まる。
「質問を返すようで悪いけれど。じゃあ魔理沙は……私の身体、見たい? 見たくない?」
「ッ……!」
一瞬、恥ずかしさから思わず否定の言葉を口に仕掛けるけれど。
何とか呑み込んで、必死に心を冷静に保とうと努力する。
「み、見たい、ぜ……。好きな人の身体に、興味がないわけないだろ……」
「……そう、だったらいいわ」
「い、いいのかよ」
「ええ。だって魔理沙は私のことを好きなんでしょう? だったら――あなたになら、私は見られても構わないわ」