■ 42.「微熱」

LastUpdate:2009/02/11 初出:YURI-sis

 霊夢の言葉が嘘みたいで、夢でも見てるんじゃないかって思う。
 だけど、夢じゃない。近すぎる距離でお互いの息が掛かり、霊夢と魔理沙の服が擦れて僅かな音がする。服越しに感じられる体温も含めて、あまりにもリアルなものばかりに満たされたこれが、現実でないはずがなかった。
(本当に、いいのか)
 そう再度問い掛けようとして、けれど魔理沙は躊躇う。魔理沙の目をじっと見つめてくる霊夢の瞳には、拒絶を孕む色なんて僅かにさえ含まれていないのだから。
 病気のせいでいつもより体温の高い霊夢から、気怠い熱が魔理沙の深い場所にまで伝わって来るみたいだ。現実だとは認識していても、感じられるものは総てがどこか虚ろにしか感じることができない。少しだけぼやけた頼りない世界の中で、理性や常識も一緒になって輪郭を失っていく。唯一確かなものは、霊夢を愛している気持ち――霊夢を求めたいと想う気持ち、ただそれだけになってしまう。

 

「ええと、脱がせるから。スカート、持っててくれないか」
「……ええ」

 

 魔理沙の言葉に促されて、霊夢が自分のスカートをたくしあげてくれる。
 スカートの裾がじりじりと上がって、見えてくる霊夢の両脚。華奢な体躯の霊夢らしい細い脚は、活発な彼女の生活とは裏腹に少しだけ不健康的な細さでさえあるように見える。そうした感想を魔理沙が抱いている間にも、じりじりと距離を詰めていく裾、少しずつ露わになっていく霊夢のドロワーズの白い生地。いつも弾りあう時にちらりと見えるだけで心がどうにかなってしまいそうな下着が、こんなにも近く、密着した場所で確かめられてしまうと、渇望にも似て膨らみすぎる心の猛りを魔理沙は抑えている自信が無くなってしまいそうだ。

 

「あんまり、見ないでよ……」
「……あ、ああ」

 

 そうは返事しながらも、魔理沙の視線は完全に露わになったドロワーズに釘付けになってしまう。
 夢みたいだ、と感慨深い思い。それと少しでも早く脱がして、誰の目にも触れられることがなかった霊夢の総てを見てしまいたいと猛る心。その二つが、魔理沙の中でどこか鬩ぐように諍う。

 

「ぬ、脱がしても、いいか……?」

 

 結局はあっさり、欲望が勝った。魔理沙がそう訊くと、霊夢は何かを言おうと口を開いて――けれど言葉が出ないみたいだった。言葉の代わりに、静かにコクンと頷いて魔理沙の言葉に応えてくれる。