■ 75.「互譲の精神」

LastUpdate:2009/03/16 初出:YURI-sis

「アリスの胸、可愛くって……私は、好きだぜ」
「……本当に?」
「ああ。……それに胸の小ささじゃ、私も似たようなものだしな……」

 

 その魔理沙の台詞に、アリスはまじまじと魔理沙の胸元を見つめてみる。
 彼女の厚手のドレスに阻まれて、その大きさを服の上から想像することは難しいみたいだけれど。

 

「……もしかして、見たいのか?」
「う、うん」

 

 あんまり魔理沙の胸元ばかりを見つめすぎていたのだろうか。そう問い掛けてくる魔理沙の言葉に、アリスは素直な気持ちで頷いて答える。正直……とても、見たい。
 だって、魔理沙がアリスの躰に興味を持ってくれているように。アリスにも……もちろん、魔理沙の躰に興味があるのだから。まして気持ちを打ち明けることさえ躊躇っていた頃であればともかく、こうしてお互いの意志を伝え合ってしまった今では、お互いの躰を許し合う行為も決して遠いものではないのだ。

 

「アリスになら、い、いいぜ……?」
「ホントに?」
「あ、ああ。……私だけ脱ぎたくないだなんて、我儘なことは言わないさ」

 

 そう言って、ちょこんとベッドの上に座る魔理沙。さりげない態度とは裏腹に、声も躰も震えて、頬にも深い紅が差しているのに。それほど緊張しているにも関わらず、躰を許してくれることが怖いぐらいに嬉しかった。
 許されるまま魔理沙の衣服に、アリスはそっと指先を触れさせる。彼女の首筋に微かにアリスの指先が直接触れてしまうと、それだけでも魔理沙はぴくっと反応してみせて。そんな仕草ひとつさえ、堪らなく愛おしかった。
 襟元だけを軽く緩めてから、一気に魔理沙のドレスを脱がしてしまう。アリスと同じでワンピースのドレスを脱がしてしまえば、それだけで魔理沙もまた下着だけの姿になってしまう。
 普段ゴテッとした厚手のドレスに隠されている分、下着だけになって初めて明らかになる余りにも華奢な魔理沙のシルエットに、瞬間アリスは心を奪われてしまう。余りにも色白で、余りにも細い腕や躰。食が細いアリスも相当に細い方ではあるのだけれど、魔理沙の体躯はアリスに負けない程に細く、繊細なように見えた。

 

「あ、あんまり、見ないでくれ……」
「……あ、ごめんなさい、見蕩れてしまって……。魔理沙、とっても綺麗よ……」
「ホントに、か……?」
「ええ。……だからもっと、あなたの綺麗な躰を確かめたくなるわ」

 

 そう言って、アリスは魔理沙の着ているシャツの肩に掛かる部分に、そっと指先を宛がう。
 アリスは「脱がしてもいい?」とは訊ねなかった。魔理沙もまた何も言わずに脱がそうとしてくるアリスの指先に、僅かな抵抗さえしてみせなかった。私達はお互いがもう、お互いの裸を望んでいることは明らかで。その為になら、どちらも愛しい人の指先に脱がされてもいいという覚悟ぐらいは、ちゃんと心に抱いているからだ。