■ 77.「互譲の精神」

LastUpdate:2009/03/18 初出:YURI-sis

「……え、エッチだぜ、アリス」
「だっ、だってえ、魔理沙がぁ……っ!」

 

 ほとんど魔理沙のことを責めるような口調になりながら、半ば反射的にアリスは答えてしまうけれど。本当は……ちゃんと、判っているのだ。魔理沙は決してアリスを焦らそうとしているわけではなく、魔理沙なりの優しさと誠実さとを以て真摯にアリスのことを愛そうとしてくれただけであって、誠意ある彼女の愛撫に咎めるべき瑕疵などある筈もない。ただ、魔理沙の繊細な愛撫があまりに性的な快楽に飢えすぎたアリスの躰には物足りなくて、勝手にアリスのほうが満足できなくなっているだけでしかないのだ。
 だから魔理沙に対して口を尖らせてしまうのは、ただのアリスの筋違いな我儘でしかないわけだけれど。そんなアリスの身勝手さを、魔理沙はただ微笑んで許してくれる。そうした優しい笑顔の裡に見ることができるのは、違いなくアリスのことを想ってくれる真情ばかりであるから。こうして魔理沙のことを愛してしまっている自分が、どれほどに間違いない相手を、自分もまた愛さずにはいられなくなる正しい相手を選んだのかということを。改めてアリスは、深々と心に思う。

 

「お、おねがぃ、魔理沙ぁ……。も、もっと乱暴に……してぇ」
「……乱暴にって、大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫、だから……無茶苦茶に、してほしい、よ……」
「わ、わかった」

 

 アリスが望む通りに、魔理沙は少しずつアリスの秘所に課す苛みを激しいものにしてきてくれる。熱い蜜を滴らせる襞と襞との境を、魔理沙の手のひらが幾度となく押しつけるように撫でていく。さらに、より深い熱を湛えたその隙間の内側を少しずつ指先で抉っては、押し拡げるようにしながら何度となく出入りしていく。

 

「ふぁ、ぁ! ……ぁ、ぅ、はぁ、っ! んぅ、ぁ……!」

 

 魔理沙の手のひらが一度アリスの下腹部を這い、上下していく度に、アリスの喉からは絶え絶えに乱れた呼吸と嬌声とが否応なしに吐き出されていた。こんなに喘ぎ、快楽の儘に躰をも乱してしまっていて。その姿を魔理沙に見られてしまっていることを恥ずかしいとは想うのに、不思議と自制しようという意志さえ持つことができなくなってしまっている。
 躰の感覚がどんどん虚ろになっていき、頭が真っ白になって何も考えることさえできなくなっていくというのに。そうした惚けた躰と心の中で、けれど魔理沙が与えてくれる刺激だけがどんなにも鮮烈に感じられるのが不思議だった。

 

「んぁ、ぅ! ぁ、ふわあああっ……!! す、ごぃっ、すごいよぉ、っ……!!」

 

 これほどの快楽、今までに感じたことなんてない。魔理沙を想うあまりに、自分の指先を這わせて自身の躰を激しく慰めたことなんて、今まで何度だってあるのに。魔理沙が与えてくれる快楽はそのどれとも違って、夥しい程の快楽をアリスの神経に直接注ぎ込んでくるかのようでさえあった。