■ 85.「微熱」

LastUpdate:2009/03/26 初出:YURI-sis

 振り返ることを許されて、魔理沙はもういちど霊夢のほうに向き直る。一瞬だけ二人の視線が繋がったりもしたけれど、すぐにどちらからともなく逸らされた。こんなに恥ずかしいことを見たい、だなんて。望んだ魔理沙も酷く恥ずかしいけれど、きっと許した霊夢の方も同じぐらいに恥ずかしいのだろう。気恥ずかしさが強すぎて、目を合わせる事なんてとてもできない。
 逸らされた視線は、けれどすぐに霊夢の下半身に釘付けになる。便座に腰掛けながら、露わになっている下肢。少しだけ開かれた両脚の隙間を、気付けば魔理沙は食い入るように見つめていた。

 

「スカートを持ってくれ。あと、もう少しだけ足を開いてくれると嬉しいぜ」
「ば、かぁ……」

 

 そう答える霊夢の声には、けれど人を罵るような意志が全く籠められていなくて。やがて魔理沙の言葉に応えてくれるかのように、おずおずと両脚を肩幅より少しだけ狭い程度にまで拡げてくれる。
 さらには霊夢がスカートの端をたくし上げてくれると、もう魔理沙の目の前に霊夢の恥ずかしい部分の総てが簡単に見て取れるようになってしまっていた。霊夢を愛したいと思う気持ちは、ともすればいま魔理沙の眼前に見えている彼女の最も弱い部位を愛し責め立てたいという願望にも通じるものがあるから。細やかな雫を僅かに纏わせた霊夢の性的な隙間の辺りに、どうしても魔理沙は心奪わずにはいられない。
 もう霊夢は「見ないで」とは口にしなかった。魔理沙もこれ以上許しを得ようとは思わず、ただ食い入るように霊夢のことを見つめ続けた。ごく狭い個室の中で、霊夢の緊張感ばかりが密に伝わってくるような気がして。便座に腰掛けていながらも、なかなかその瞬間が訪れずにいるのは、もしかしたら自分に緊張してくれているからなのかもしれないと思うと。そんなことにさえ、やっぱり魔理沙は少なからず嬉しい気持ちを抱くのだった。

 

「ぁ、で、でちゃ、う……!」

 

 けれど緊張による抑制も長くは続かなくて。ぴくっと小刻みに何度か霊夢は躰を震わせると、抗いきれない何かを堪えるかのように目を細めながら、ちょろちょろと少量ずつおしっこを漏出し始めた。二人分の息遣い以外には全く音が存在しない狭い狭い部屋の中で、唯一霊夢の生み出す水音だけが確かな音量で響いていく。
 霊夢の躰から生み出される、殆ど無色透明の液体。愛しているが故の錯覚なのかもしれないけれど、魔理沙には霊夢が排泄するそれさえ、僅かにさえ穢れたものだとは思うことができなかった。

 

「は、ぁ、ぁ……」

 

 水勢が弱い分だけ長く続いたおしっこも、やがては徐々に鎮まっていく。急に落ちた体温を惜しむかのように、霊夢は幾度か自分の躰を、ぶるっと少しだけ強く震わせてみせた。