■ 17.「魔法少女リリカルなのは/リレー小説 - 07」

LastUpdate:2009/05/17 初出:YURI-sis  今回の担当:桂馬

 周囲の物音で、施錠され閉じ込められたことにフェイトは気づいたけれど、そのことにはさして驚かなかった。もちろん閉じ込められれば困るし、実際フェイトと向かい合うはやてはとても困惑した表情を浮かべてみせているけれど。――フェイトにとっては、はやてから受けた告白そのもののほうが余程大きい衝撃だったから、続いて聞こえてきた物音なんて殆ど心に届かなかったのだ。
 はやてが私を求めてくれたことが、フェイトの心に小さくない震えを抱かせた。もちろんそれは歓喜に打ち震えた心。フェイトが告白したことではやてを困らせてしまったから、この十数分のうちに『諦めなきゃいけない』と戒めるにまで至っていた筈の恋情を、けれど今度ははやてのほうから告白して求めてきてくれている。
 はやてが嘘なんか吐かないことは知っているし、真摯に見据えてきてくれる彼女の表情は嘘を吐いているものでもないのだから信じていいはずなのだけれど。フェイトにはまだ、どこか夢心地のように現実が信じられなかった。――もちろん信じたいとは思うのだけれど、あまりの果報に心が追いつかなくって。

 

「ふぇ、フェイトちゃん。もしかしてうちら、閉じ込められてしもた?」
「………………あ。う、うん。そうなのかも?」

 

 じんと込み上げる嬉しさにばかり心を捕らわれていたものだから。焦るはやての言葉によって現実に引き戻されてようやく、フェイトは閉じ込められてしまったことの意味に気づかされる。二人して室内の隅のほうに陣取っていたものだから、施錠前に中に人が居るのを確認する人の視線におそらく入らなかったのだろうか。
 とはいえ、冷静になって考えてみればそんなに慌てる程の状況でもないのかもしれない。施錠されたとはいえ中からは開けることができるのかもしれないし、万が一出られない状況に陥ったとしてもちゃんとバルディッシュは携えているのだから。図書館の一部を壊してしまうことには少し心が咎めるけれど、私はともかくはやてが困るのは嫌だから、他に方法がないようなら躊躇う理由もなかった。

 

「……あの、フェイトちゃん?」
「うん、どうしたのはやて?」
「え、えっと、その。さっきフェイトちゃんが私を拒んだ理由って……ここだと『誰かに見られるかもしれない』からやったよね……?」

 

 はやてから、そう言われてフェイトもはっとする。
 こうして閉じ込められてしまった以上は、もうこの部屋に他の誰かが入ってくる可能性なんて殆ど無いのかもしれなくて。そうするとフェイトがさっき拒んだ言葉の意味なんて、全部どこかに失われてしまったのかもしれなかった。

 

「そ、そうだね……?」

 

 心が、否応なしに高鳴ってくる。はやてが次にせがんくる言葉は容易に想像がつくし、今度それをはやての口からそれを望まれてしまえばフェイトは拒むだけの理由を挙げることができないであろうこともまた、容易に想像できることであった。
 それを理解しながらも、フェイトは先手を打ってはやての言葉を押し留めるようなことはしなかった。……できなかったのだ。だってフェイト自身、内心でははやてが次に口にしてくれる言葉を待ち侘びてさえいるのだから。はやてを拒む理由を持たないという事実以上に、他ならぬフェイト自身が……拒むという意思を持つことができないのだから。

 

「……ごめんな、うちフェイトちゃんにもう一度言ってしまう」
「う、うん」
「フェイトちゃんが私を好き言うてくれるんなら。……それ、証明してもらってもええかな?」

 

 今度は制服を自分から開けるようなことを、はやてはしなかったけれど。
 その言葉に込められた真意だけは、十分すぎるほどフェイトの心に届いてきた気がした。