■ 27.「群像の少女性06」

LastUpdate:2009/05/27 初出:YURI-sis

 基本的には地上よりも地下の方がずっと暖かいとはいえ、さすがにこれだけ冬も深まった頃合いとなると図書館の中も相応に寒い。リトルに教えて多少は暖房のような魔法も使わせてはいるのだけれど、それでもこれだけの広さを持ち、そのうえ幾多の乱立した書架に阻まれてはなかなか上手く暖めることもできないらしくて。結果としてどれも小部屋で暖房効率の良い、地上のどの部屋よりも地下の方が寒いという悲しい状態になってしまったりする。
 それでも地下の恩恵か、若しくは多少の暖房魔法の甲斐あってか、冬らしい厚手の部屋着を身につけていれば寒さは殆ど気にならないレベルにはなる。……唯一、いまパチュリーがこうしているように寒いにもかかわらず衣服を身につけないでいる瞬間だけが、極端な例外なのかもしれなかった。

 

「はぁ、ぁ、ぁ……」

 

 その寒さも暇無く指先を自身の敏感な個所に這わせ、苛んでいくうちに気にならなくなっていく。
 火照りすぎる躰は、内側からの夥しい熱気で熱いぐらい。自慰を始めた瞬間には裸身には寒すぎたはずの空気も、いまはその冷たさが却って心地よいぐらいにさえなっていた。

 

「あ、アリス、ぅ……! は、激しい、よぅ……っ!」

 

 自分で自身の躰を苛みながらも愛しい人の名前を呼び、あたかもそこにアリスがいるかのように錯覚させながら苛みの指先だけをただ課し続けていく。
 好きな人と結ばれることができたら、自慰をしなくなるというのは嘘だと思えた。寧ろ愛される喜びを覚えればこそ、いつだってふとした瞬間に愛されたい衝動に駆られる結果になる。……もちろん、いつだって恋人のすぐ傍にいられればまた別なのかもしれないけれど。アリスにもパチュリーにもやるべきことが、究めるべきことがある以上は会えない日も少なからずあるもので。アリスに会うことが叶わない淋しい日には、何度もこうして自分の躰を慰めることで衝動にささやかな慰撫を与え、鎮めてやるしかなかった。

 

「あ、ああっ、ふぁああああああ……!!」
(ふふっ、パチュリーって本当にいやらしいよね。こんな簡単にイっちゃうんだ?)
「……! そ、そんなっ、そんなコトはっ……」
(言い訳してもバレバレだよ? ほら、もっとこうされたいんでしょう?)
「んぅぅっ……!!」

 

 達したにも関わらず、パチュリーはさらに自身へ課す指先の愛撫を激しいものにしていく。深い酩酊がじんじんと頭を痺れさせるのに、躰には弛緩させることを許さず敏感になるばかりの性器を責め立て続けていく。
 アリスはいつも、連続でパチュリーの躰を苛むことが好きだった。達すれば達するほど普段の冷静なパチュリーが潜まって快楽や欲望に正直なパチュリーが姿を見せてくれるから、だからあなたを狂おしいほどに責め立てるの、と。いつかの日にアリスがそう言ってくれたのを覚えている。

 

「あ、あ、ぁ……!! 凄い、よぅっ……ぁ、アリスぅ……っ!!」
(あら、またイクの? 本当に凄いわ、パチュリーの中からどんどん蜜が溢れてくる)
「……! そ、そんなこと言わないでぇっ」

 

 何度でも連続で責め立てられ続け、何度でも連続で達せさせられる。
 パチュリーの躰はただ、アリスから与えられる快楽の儘に身動ぐ人形になる。

 

「も、もう許して……! こっ、このままじゃ、私……ぃっ!!」
(ふふっ、ホントはもっとして欲しい癖に)
「そ、そんな、ぁっ……!!」

 

 現実のアリスに愛される時、いつも後半ずっとパチュリーがアリスに許しを請い続けることになるように。自慰の時にもまた、パチュリーはそこに馳せている幻想のアリスに許しを請い続ける。彼女の慈悲に縋り、限りなく続く苛烈な責めに、ただひたすらに許しを請い続けていく。
 結局は――パチュリー自身もまた、そのように愛されることを望んでいるのだ。