■ 30.「魔法少女リリカルなのは/リレー小説 - 13」

LastUpdate:2009/05/30 初出:YURI-sis  今回の担当:桂馬

(怖くない、筈がないのに)
 躰が刻む小さな震えも、はやては必死に隠そうとしてくれているみたいだけれど、こうして肌に指先や手のひらを這わせているフェイトには簡単に伝わってきてしまう。はやては私なんかのことを好きだと言ってくれて、それを証明するかのようにこうして肌を晒しながら総てを許してくれるけれど。行為そのものよりも、自分なんかの為にここまでしてくれるはやての気持ちそのものが……フェイトにはどんなにも有難く、そして嬉しかった。
 病的なほど白い、透き通るようなに肌はなんだか触れてはいけないような意識さえ覚えるけれど。それでもはやて本人が許してくれるから、フェイトは慎重に彼女の躰に触れ求めていく。とても繊細な壊れ物を扱うかのように、慎重に大切に、優しく撫でるように。

 

「はっ、ぁ、ぁ……」

 

 やがて一際熱い溜息がはやての口元から零れ落ちると、私たちの周りの空気までもが一変してしまったみたいにさえフェイトには感じられていた。――周囲の余計な音が何一つ聞こえなくなって、代わりに鼓動や息遣いといった、はやてが生み出す細やかな音までもが余すところ無く耳に届いてくる。
(まるで、はやてを感じるためだけの私に生まれ変わったみたいだ)
 そんな突拍子もないことさえ一瞬考えてしまったぐらいだ。音だけではない、触れ這わせるはやての肌の感触、その裡から感じる熱、あるいは僅かに感じられ始めた汗の匂いにさえ鋭敏になっていく感覚。自身のどの感覚器が齎すはやての存在さえも、そのままフェイトの心にさえ深く伝わり留まり、温かな愛しさにばかり生まれ変わっていく。

 

「好きだよ、はやて」
「……信じて、しまうよ?」
「うん、信じて欲しいかな。こんなに、はやてが……好きだから」

 

 五感のいずれかがはやてを捕え、感じるたびごとに愛しさは降り積む。柔らかな肌、詰まった声、少しだけ困った顔。はやての総てが堪らなく愛しくて愛しくて、自分だけのものにしたくなってしまう。
 自分の持っている独占欲がこんなにも深いだなんて、フェイトは知らなかった。一糸纏わない躰を露わにして、きっと誰にも見せたことのない熱い息や声を、自分にだけ魅せてくれるのが狂おしいほどに愛しくてならない。同時に、こんなに素敵なはやてを他の誰にさえ見せたくないと、心底フェイトは思わずにいられなかった。
 はやてに告白してからきっとまだ一時間さえ経っていないのに、私の心はこんなにも変質してしまっていた。初めははやてに想いを伝えることだけが総てで、報われることなんて決して期待してなどいなかった筈なのに。今はもう、その意識をフェイトは思い出すことができなかった。はやてのことをどんなにも愛している気持ちそのものは変わらないけれど、私はもう……はやてを求めるのを諦めることさえ、きっとできない。

 

「な、なんか手つきがえっちやよ、フェイトちゃん……」
「……私も、自分がこんなにえっちだなんて知らなかったよ」

 

 とうとうはやての乳房にまで指先を這わせると、爆ぜるように温かな吐息がはやての口元から零れる。
 自身の欲望に抗えず、愛撫の指先ではやてを求めずにいられないフェイトを。言葉で軽く咎めながらも、けれど全部許してくれて、そして全身で感じてくれているはやてのことが、ただどんなにも愛しかった。