■ 45.「群像の少女性10」

LastUpdate:2009/06/14 初出:YURI-sis

 そんな二人で笑い合う時間も長くは続かない。――続けていられない。
 何しろ、萃香は霊夢の目の前で裸の上半身を晒してしまっているのだから。笑い合ったことで一度は薄れていた性愛の空気が、徐々に密度を戻してくるに従って私たちの笑い声も少しずつ掻き消されてしまう。ついには二人して何も言えずに、ただじっと見つめ合う程にまで。

 

「んっ」

 

 萃香の乳房に、少し冷たくなった霊夢の指先が触れてくる。
 乳房を伝い、お腹を撫でるように過ぎて行って、そして。
 萃香のスカートのほうにまで霊夢の指先が触れてくると。霊夢の求めたがっていることは萃香にも簡単に判るだけに、萃香はさらに襲い来るであろう恥ずかしさにぎゅっと強く目を閉じて耐えようとする。

 

「下も、いい?」

 

 駄目だなんて言う筈がないのに。決意さえ決めていた萃香に、スカートの端を軽くつまみながら霊夢がいちいちそう訪ねてくるのは、細かい優しさなのか、それともやっぱり意地悪なのだろうか。
 脱がされて、胸以上に恥ずかしい部分を徐々に霊夢の目の前に晒け出す恥ずかしさを思うと、少しだけ怖いことではあったけれど。それでも覚悟まで決めていた萃香は、躊躇うことなくコクンと頷いて霊夢の問いに答える。

 

「でも……ちょっと狡いよ、霊夢……」
「う、やっぱり狡いかしら?」
「うん。だって私も、霊夢の裸が見たいもん。……それなのに、私ばっかり脱がされてさ」
「……ごめんね、今はちょっとだけ好きにさせて。ちゃんと後で、私のことも萃香の好きにしていいから」

 

 ――萃香の好きにしていいから。
 霊夢の蕩けるような甘い言葉が、萃香の心を溶かすような感覚。
 その約束さえあれば、どんなに恥ずかしいことでも我慢できるような気がした。