■ 48.「群像の少女性13」

LastUpdate:2009/06/17 初出:YURI-sis

「あぅっ、ぁ、ぅ……! ふぁ、ぁ、ぁあっ……んぁああ!」

 

 霊夢にとってそれはまるで夢を見ているような感覚だった。すぐ傍の目の前で、愛する萃香が自分の指先に躰と喉とを震わせ、喘いでくれている。夢と違うのは、萃香の切羽詰まった表情や声、それに艶といったものが徹底的なリアルさを伴っているところだろうか。
 普段は快活を通り越して、時に騒がしいぐらいの萃香なのに。性愛の最中で見せてくれる表情はどんなにも切なく、彼女が漏らす吐息や声はあたかも湿度を纏っているかのように静かで艶やかだった。こんな萃香の姿は、きっと幻想郷に住んでいる誰だって知っては居ないのだろう。知っているのは……きっと、いままさに萃香の躰を苛んでいる霊夢ひとりだけで。これほど魅力的に映る萃香の痴態が、私だけの前でだけ見せてくれるものであると言うこと。それを胸の裡で実感する都度、震えるほどの歓喜が霊夢の心を走るみたいだった。

 

「……萃香。あなたが、誰よりも好きよ」
「あぁ、あああっ……! わ、私も……霊夢っ、が、好きぃっ!」

 

 誰かを愛してしまうことを『心を奪われる』と言うけれど。その表現は、非常に的を射ているように霊夢には思えた。
 きっと霊夢は萃香に心を奪われてしまっていて、萃香は霊夢に心を奪われてしまっているのだろう。だから萃香は霊夢が望むことなら――それが、どれほどの恥ずかしさを伴うものであっても――決して拒んだりはしない。……拒むことさえ、できないのかもしれない。霊夢が『声を聞かせて』とお願いすれば、萃香には声を我慢することもできなくなる。指先を萃香の秘所に執拗に這わせる度に、萃香の躰が幾重にも震え、張り詰めすぎた嬌声が部屋の中に響いていく。
 もちろん霊夢もまた、萃香に『お願い』をされてしまえば。例えどれほど霊夢にとって恥ずかしかったり辛かったりするものであったとしても、それが萃香のお願いである以上は叶えずにいられないだろう。萃香に愛される時には、きっと私は萃香の求める総てに抗う意志さえ持てずに、彼女の望むままの姿で愛されるのだろう。
 ――それでも、今は霊夢が萃香を愛する番だから。
 霊夢はただ、精一杯の想いを込めた指先で、執拗に萃香の躰と心を追い詰めていく。