■ 58.「群像の少女性23」

LastUpdate:2009/06/27 初出:YURI-sis

 とうとう残されたドロワーズに萃香の指先が触れてきたことは、薄い布地を介してすぐに霊夢自身にも伝わってくる。脱がせる時に遠慮をする必要はないと予め宣言しておいたのは霊夢の方だし、それに霊夢はもう萃香を既に裸にしてしまっているのだから、脱がされること自体はもちろん構わないのだけれど。
(儘ならないものね……)
 あまりに激しく騒ぐ胸元に手のひらを宛がいながら、霊夢は静かにそんなことを痛感する。脱がされるのは当然のことだし、脱がすのは萃香の当然の権利だと判っている。これから愛し合う為に裸になることが必要だとも判っている。……それでも霊夢は緊張せずにはいられないし、同時に少しだけ〈怖い〉とも思わずにいられない。
 だって、当たり前だけれどこれまで誰かに裸を見せたことなんてありはしないのだ。ましてこれから裸になるのは、萃香に触れられ愛されるために脱ぐということなのだから。もちろん愛されることを思えば嬉しいと思う気持ちも、期待して止まない心だって沢山あるのだけれど。未知の何かに踏み出そうとすることには、どうしても緊張や恐怖だって付き纏うものなのだ。

 

「嬉しいね。緊張、してくれるんだ」
「……するわよ。しないわけないでしょう」
「ありがと」

 

 にかっと、嬉しそうに笑う萃香。その笑顔が愛しすぎて、この人の為なら頑張れるという気持ちにもなってしまう。愛されるのは怖いことかもしれないけれど……愛されることで得られるものや実感できることは、その畏怖と引き替えにするだけの価値があるに違いないのだから。

 

「……あ、あ、あ」

 

 何度も心の中で意志を固めて、覚悟を決めたはずなのに。それでもいざ自分の下半身からずりずりとドロワーズが下ろされていく感覚には、何とも言えない複雑な気持ちが心には溢れた。恥ずかしさが限界を超えすぎて、頭の中はもう何が何だかよくわからないことになってしまっている。
 きっと、私の身体の中で一番恥ずかしい部分を萃香に見られてしまっている。ドロワーズが膝の辺りまでずり下げられたからには、もう全部が萃香の視線の前に晒されてしまっているのは疑いようのないことで。それを思うと、今すぐ逃げ出したい気持ちにもなってしまう。