■ 60.「群像の少女性25」

LastUpdate:2009/06/29 初出:YURI-sis

「こうやって霊夢とえっちなことをして、判ったことがあるんだ」
「うん、何かしら?」
「私、さっき霊夢にして貰ってるときってさ。実は自分ばっかり幸せで、ちょっと申し訳ないなあって思ってたりしたんだ」

 

 そんな風に考えていただなんて霊夢には思いも寄らないことで。萃香の言葉に、霊夢は少なからず驚かされもする。霊夢は無意識のうちに何かを言い返そうとしていたけれど、その言葉は「だけど、違うんだね」と続けた萃香の言葉によって遮られてしまった。

 

「えっちなことって……されるほうだけじゃなくて、するほうも幸せなんだね」
「……ええ。そう、その通りだわ」

 

 掻き消されてしまった無意識の言葉は、霊夢自身にも何を言おうとしていたのか思い出すことができなかったけれど。萃香の言葉に霊夢は内心で力強く頷いてしまっていて。だからきっと、霊夢が言いたかった言葉はそのまま萃香が今告げてくれたのだと思うことができた。

 

「相手だけ幸せで満足だなんて、そんな奉仕精神は私は持ち合わせていないわよ」
「ふふっ……そんな風に言っちゃって、そんなの判りやすい嘘なのに。霊夢が本当は誰より優しいんだって、私はちゃんと知ってるんだから」

 

 不器用なりに萃香の感想を肯定してみせた霊夢の言葉。
 けれど萃香にそんな風に続けられてしまうと、もう霊夢は何も言えなくなってしまう。
(……確かに、嘘ね)
 内心で霊夢は苦笑せずにいられない。もしかしたら萃香は私以上に、私自身のことをよく知ってくれているのかもしれなかった。
 萃香の為なら実際私は何だってできてしまうだろうし、どんな努力や代償を払うことにも躊躇したりはしないのだろうから。まして私自身の幸せとだなんて、もはや比較するまでもないことだ。