■ 86.「泥み恋情39」

LastUpdate:2009/07/25 初出:YURI-sis

 急須から湯飲みに注いで熱いお茶をお出しすると、お風呂上がりであっても霊夢さんは躊躇無くそれに口を付けられた。お風呂で身体は十分温まっておられるだろうから、熱いお茶よりも冷たいお茶か何かの方が喜んで頂けるのではないかと、少しだけ迷ったりもしたのだけれど。

 

「そういえば、早苗の保護者はどうしたのよ?」
「保護者って……。神奈子様と諏訪子様でしたら、今日は……その、えっと、ちょっと離れの方に」
「離れ? どうして早苗ひとりをこっちに残して?」
「ええと……この時期みたいに長雨の続く季節には、諏訪子様がとても積極的でいらして。それで、その……お二人で、睦びに、といいますか……」

 

 もう今回の長雨の間だけでも、こうして二人で籠もられるのは何度目になるだろう。
 少しだけ淋しいと想う気持ちが無いと言ったら嘘になるけれど、それでもお二人の邪魔になることは早苗の本意ではないし、応援してもいるから。中が睦まじいのは純粋に良いことなのだとは思うけれど。

 

「……ああ、よく判ったわ。変なことを言わせて済まなかったわね」
「い、いえ。こちらこそ、すみません……」

 

 離れでお二方がなさっていることを僅かにでも想像してしまえば、忽ち疚しい感情が早苗の頭には溢れてくるようでもあって、ぶんぶんと頭を強く振って早苗はその疚しさを振り払おうとする。早苗の目の前には湯上がりの霊夢さんが座っていて――そのお姿が、あまりにも色っぽいものだから。想像するに容易いだけに、なかなか頭から離れてくれなくて大変だ。