■ 101.「純愛調教 - 04」

LastUpdate:2009/08/09 初出:YURI-sis

「ただ、アリスに話すに当たって……私達がそれを望むようになった経緯、それからアリスにお願いしようと思った経緯なんかを話すと、ちょっと長い話になってしまうと思うのよ。だからそれを考慮して食事に招待、という形を取らせて貰ったのだけれど、少し長い話をしても構わないかしら?」
「ええ、それはもちろん。食事しながらで良いのなら長話も苦痛ではないし、詳しく聞かせて貰えるのであれば私も聞きたいと思うから」

 

 それは、真実アリスの本心でもある。レミリアが私に対して何を望もうとしているのかまだ知らないけれど、詳しく話してくれるというのなら聞く意志ぐらいは持っているから。
 アリスの返事にレミリアは深々と頭を下げた。

 

「そう言って頂けると有難いわね。――咲夜」
「はい、お嬢様」

 

 軽く一礼しながら、咲夜は手際よく小さなテーブルの上にお皿を並べていく。あくまでも客という扱いなのか、レミリアより先にアリスの側から並べられていくお皿の上には新鮮なトマトの風味が香るアンティパストやパスタが並べられ、続いてレミリアの側にはフォカッチャやエッグスベネディクトといった比較的軽い料理が並べられていく。

 

「前菜も主菜も、一緒にお出しして申し訳ないのだけれど」
「ううん、そんなのは全然気にしないわ。あんまり堅苦しくされるのもちょっと抵抗があるし……でも、どうしてレミリアとメニューが違うの?」
「そのことなら気にしないで。アリスと違って私はいま起きたばかりだから、あまり重い物を食べる気にはなれないのよ」
「……ああ、そういうこと」

 

 アリスが受けたのは『夕食への招待』だったから、レミリアの側に出されたパン中心の軽食メニューには違和感を覚えずにはいられなかったのだけれど。なるほど、確かに夜に起きるレミリアにとっては夕食が軽めの食事になるのは自然なことなのだろう。
 焼きたてのパンの香ばしさにも魅力を感じるけれど、それ以上に食欲を誘うトマトの風味はアリスの鼻腔を擽ってきてやまない。小さなテーブルの上に所狭しと並べられたお皿のうち、前菜のほうへアリスは静かにナイフとフォークを寄せていく。一応それなりの礼儀作法の心得はあるけれど……アリスの向かいでレミリアが直接パンを手に持って食べてくれているおかげで、あまり作法とかそういったものを気にせずに食べられるのは有難かった。