■ 106.「群像の少女性36」

LastUpdate:2009/08/14 初出:YURI-sis

 探るような指遣いが、次第に求めるような指遣いに変わってくると、早苗のそうした冷静な思惟も瞬く間に不可能になっていく。靄が掛かったみたいに何かを考えようとしても上手くいかなくなって、ただ霊夢さんが与えて下さる刺激と、それに導かれる感覚に身を任せることしかできなくなってしまうかのようだった。これが幸せなのだと判断できる理性さえもう残されては居ない筈なのに、けれど思考が朧になっていくほどにより確かに感じられていく幸福感がある。その理由は、もういま早苗には確かめようと意識することさえ難しいことだ。
 ただ、ひとつだけ確かなのは――強く自覚されている被支配の感覚というのも理由のひとつのであるのだろうということ。霊夢さんの与えて下さる微細な刺激にさえ、早苗の躰はあられもなく乱れさせられてしまうのだから。霊夢さんの意の儘に弄ばれている――そうした被虐めいた自覚が、強い幸福感を導くひとつの理由になっているのだと思えた。
 愛するとか愛されるとか、そうした気持ちが導くのは結局の所『相手を自分のものにしたい』か、若しくは『自分が相手のものになりたい』という気持ちのどちらかにいきつくものなのかもしれない。擽ったさに、快楽に、霊夢さんが与えて下さる全ての刺激に狂い乱れるしかない早苗自身の姿は、もしかしたら限りなく理想的な愛する人に愛される姿でさえあるのかもしれなかった。

 

「あぁ……! ふっ、ぁ、ぁあああ……!」

 

 擽ったさが徐々に薄れていって、快楽ばかりが強いものになっていく。痺れるような甘い痛みさえも快楽をより強めるためのエッセンスにしかならなくて、早苗はただ気が狂いそうな程の気持ちよさの中に心を堕とされていく。