■ 118.「斯く熱めく - 05」

LastUpdate:2009/08/26 初出:YURI-sis

「……重くはないですか?」
「軽すぎてちょっと怖いぐらいです。何だか、壊してしまいそうで」
「大丈夫ですよ。案外、女の子っていうのは丈夫にできているものなんです」

 

 ごく近い距離で、可愛く微笑むさとり様の魅力、射竦められる想いがする。
 こんなに魅力的な方が、自分と愛し合うことを求めて下さって居るだなんて。やっぱり今でも、空にはどこか信じられなかった。

 

「ですから、空。気にせずに、少しぐらい乱暴にしていいんですからね?」
「え、ええっと……一応、優しくしたいとは思っているのですが。私も、一度始めたら自制できますかどうか」
「ふふっ、私も優しい空が好きですけれど。じゃあ少しだけ、乱暴な空に愛されることを、期待してもいいのかしら?」
「……き、期待なんてしないでください」

 

 自慢じゃないけれど、割と熱くなりやすいほうなのだ。さとり様に拾って頂いて、温厚なさとり様の許で暮らすようになってからは随分そうした自分も鳴りを潜めてはいるけれど、かっとなるとすぐに自制できなくなる性分が自分の中に眠っていることを空は正しく自覚している。
 喧嘩っ早い心は、多分性的な衝動においても顕れるものかもしれなくて、それが少しだけ怖い。乱暴に愛することを許して下さっているとはいえ、空はできるだけ紳士的にさとり様のことを愛したいと思うからだ。乱暴に愛することで、少しでもさとり様に無理を強いたり、傷つけたりすることがあれば……私は、自分で自分を許すことができなくなるだろうから。
 できるだけ丁寧に、を意識しながらベッドの上にさとり様の躰を降ろしていく。不器用な空にはその程度のことも難しくて、少しだけ勢いがついてしまったさとり様の躰が、ぽふっと撥ねる柔らかなベッドに包まれるように受け止められた。
 横たわったさとり様が、見上げるように空の瞳を見つめてくる。不器用だから降ろす際にそうなってしまったのだろう、ベッド上に乱れているさとり様の着衣や髪といったものが、妙に艶めかしくて胸の裡で一段と鼓動が早くなったのが空自身にとっても意識されていた。