■ 119.「斯く熱めく - 06」
「なんだかこんな格好で空に見下ろされるのは、少しだけ恥ずかしいですね」
「不思議と、私の方も結構恥ずかしかったりします……」
「……そうなのですか。では、お相子ですね」
頬を赤らめながら、さとり様が小さく零して下さる言葉が、空の心を少しだけ温かくする。私達がこれからしようとしている行為を思えば、本当はこの程度のことで弱音を吐いていてはいけないのだろうけれど。
それでも、二人で一緒に感じる想いということであれば許されるような気がして。愛情も然る事乍ら、比較して負けないほどの使命感に似た想いにも駆られている空にとっては、主であるさとり様が先に弱音を吐いて下さることは(私も弱音を吐いていいのだ)と意識させてくれる有難い言葉でもあった。
「空、お願いします。……私の服を、脱がして頂けますか」
「……は、はい」
何かを覚悟するように、さとり様は瞼を静かに閉じられた。
小さなお躰を包む、少しだけぶかぶかのブラウス。前開きのそれを、襟元側からひとつずつ空は丁寧にボタンを外していく。ボタンをひとつ外していくごとに、露わになっていく薄桃の肌着がどうしてもちらちらと視界に入ってきてしまって、目のやり場に困ると共にちょっとだけえっちなそれが空の脳内に様々な想像を掻き立てて止まなかった。
「……ふふ、安心しました。ちゃんと私相手でも、えっちなことを考えて下さるのですね」
「え!? ぇ、ぁ、そ、その」
「すみません、目を閉じていても心のほうは見えてしまうものですから。――ですが、ありがとうございます。少なくとも今だけは、私は空だけのものですから。空の好きなようにして頂いて構わないのですよ?」
「そ、そういうわけには……」
いかない、と強く思いながらも。けれど空はその先の言葉を濁してしまう。
だって、空の眼前であまりにも無防備な姿を見せて下さっているさとり様を相手に、いつまで冷静な自分を保っていられるかは空自身にさえ判らないことなのだから。