■ 128.「斯く熱めく - 15」

LastUpdate:2009/09/05 初出:YURI-sis

 シャツを失ったことで、上半身が完全に露わになったさとり様の躰。その総てを見たいという空の気持ちが通じてしまったのだろうか、緊張に躰を震わせながらも、おそるおそるといった調子でさとり様は胸元を覆い隠していた両腕を下ろして下さった。
 まず目に入ったのは、殆ど膨らみらしいものがない乳房。それは空自身も同じことだし、空よりも小柄なさとり様の体躯からすれば想像できていたことなので、驚く程でもなかったのだけれど。……やっぱり目に飛び込んできて辛いのは、そのあまりの痩せ細ったお躰そのものだろうか。

 

「大丈夫です。これでも長い間生きてきた妖怪なのですから、見た目ほど脆弱というわけでもないのですよ」
「……今後はご自分を大事にして下さるという約束、ちゃんと守って下さいね?」
「はい。空がそれを望んでくれるのでしたら、空の為に頑張ろうと思っていますから。……空も、私がちゃんと頑張れるように、傍で監督して下さいね?」
「承知しております。……嫌だって仰っても、離れてなんてあげませんから」

 

 左手を伸ばしてお腹の辺りにそっと触れてみると、さとり様の肌は実際かなりの熱を帯びていらっしゃって。先程ぽかぽかして熱いと仰っていたのが、真実のものであることが空にも伝わってくる。右手で自分の躰のほうにも触れてみると、服越しであっても自分の躰もまた同じぐらいに熱を持っていることが判って。二人一緒なのだと思うと、嬉しさはさらに強まって感じられた。
 熱めく躰は指先を触れさせるだけでも熱く、手のひらをそっと宛がえば裡に秘めた熱の奔流がそのまま流れ込んでくるかのようでさえあった。さとり様のお腹に、乳房に。より深い熱の在処を求めるかのように空の手のひらはさとり様の躰を這い、求めていく。腕を介して伝わってくるさとり様の熱が、空自身が持つ熱に相俟って融け合い、ひとつのものになる。それは空自身が持つどんな力よりも膨大な熱を湛え、胸の裡で今にも破裂しそうな程に犇めいて存在を主張していた。