■ 129.「斯く熱めく - 16」
(熔かされてしまいそうだ……)
そう思う。熱さには慣れているはずなのに、さとり様の肌が浮かべる熱気には抗えなくて、そこに手を触れさせているだけで今にもどうにかなってしまいそうな程に心が乱されていくのを、ただぼんやりと空は感じ取っていた。上半身だけを脱がしてしまっただけでこうなのだから、さとり様に残された総てをも脱がしてしまえばどうなるのだろうか。
さとり様のスカートに手を掛けて、指先で探し当てたホックをそのまま外してしまう。急に緩くなったスカートはベッドの上であっても容易く脱がすことができそうで――そうした状況になってしまって初めて、下半身も脱がしてしまおうとする前に、脱がしても良いものかさとり様に許可を求めるべきであったことに空は気づかされた。
もう殆ど膝までスカートを脱がしてしまっているからには、今更改めてそのことを空のほうから訊ねることはもうできなくて。……けれど、さとり様のほうから何かしらの言葉が吐き出されることもなく、どうしてよいものか空は困惑してしまう。いっそ咎めて下さったら素直に謝れるのに――そのようにも思うのに、けれど空のそうした心の声が聞こえている筈であるにも関わらず、さとり様は何一つ空の行為を咎めては下さらなかった。
「……私は空のペットですから」
「へっ?」
「だから、あなたの好きにしていいんですよ」
咎める代わりに、告げて下さった言葉。
それは許す言葉であると言うよりも、さとり様の望みを何よりも直接に伝えてきてくれる言葉のように、空には聞こえていた。
「判りました。ですが……本当に嫌なことがあったら、ちゃんと拒んで下さいね」
「……はい」
頷いて下さった、その笑顔を確かめてから。
半脱ぎのスカートに再度手を掛けて、空はそれを完全に抜き取ってしまう。さとり様に残されているものといったら、もう小さなお尻を包むショーツひとつだけ。先程脱がしてしまったシャツとお揃いの薄桃のショーツは、さとり様にとても似合っていらして。……同時に、得も言われぬ邪な欲望を、空の中に掻き立てるようでもあった。