■ 132.「斯く熱めく - 19」

LastUpdate:2009/09/09 初出:YURI-sis

「……誤解しないで下さいね。空とキスをしたくないわけではないのですが」
「わ、判っております。……すみません、今のは私が軽率でした」

 

 自分の愛液を口にしたくないと思うのは自然なことだし、空だって同じ状況になれば嫌だと思うだろう。性愛の最中で感じ続けている熱に浮かされて、少し思慮が鈍っていたのかもしれないと空は自分を恥じる。さとり様が何でも許して下さるからといって、すぐ調子に乗ってしまうのは自分の悪い癖かもしれない。

 

「何だか……私だけ恥ずかしい格好をしているのは、変ではありませんか?」
「へっ?」
「服です、服。私ばっかり裸なのは狡いです。空も同じ格好になって下さい」
「わ、私もですか……」

 

 突然の要求に、空は一瞬だけたじろぐ。
 それでも、さとり様がそう思われるのは当然のことだし。……さとり様がそれを望んで下さるのであれば、空には断る理由もない。頷いて応えたあと、すぐに空は自分からいそいそと服を脱ぎ始める。
 緊張が僅かに指を震えさせていたけれど、着慣れた衣服を脱ぐ程度であれば問題にもならない。上着とスカートをベッドの脇に脱ぎ落として下着姿になり、シャツの裾に手を掛けたところで、不意にさとり様の手のひらが空の手の甲に触れて制止してきた。

 

「下着を脱がせるのは、私がしてもいいですか?」
「そ、それは……もちろん構いませんが」
「ありがとうございます」

 

 身につけている白いシャツに、そして時折空の素肌にもさとり様の細長い指先が触れてくる。
 ――当たり前だけれど、腰やお腹の辺りを触られるなんて初めてのことで。擽ったさと伴う、自分の意志に拠らない些細な刺激に空は身動ぐ。さとり様も先程その感覚を空に脱がされたことで、身をもってしっていらっしゃるのだろう。空の反応をみて、小さくくすりと微笑んでみせた。