■ 133.「斯く熱めく - 20」

LastUpdate:2009/09/10 初出:YURI-sis

「ばんざい、してください」
「……はい」

 

 言われるままに両腕を上げると、続いてするするとシャツが抜き取られていく。躰が昂ぶってからというもの、随分と前からずっと暑いと感じていたし、その意識は上着を脱いでも変わらなかったのに。最後に下着の薄いシャツ一枚を脱がされて裸にされてしまうと、一変したように薄ら寒く感じられてくるから不思議だった。

 

「ひゃうっ!?」

 

 そんなことを考えていた矢先、不意に胸に変な感触を感じて空は悲鳴を上げてしまう。
 乳首に襲いかかった、湿り気を帯びた妙な感触。空の乳房のすぐ傍にまでさとり様のお顔が近づいていて、舐められたのだとすぐに空も理解した。

 

「び、びっくりさせないで下さい……」
「すみません、舐めてみたくなったもので。……少しだけしょっぱい味がするのは、汗の味でしょうか?」
「……し、知りませんっ」

 

 胸元を舐められて、その感想まで口にされたことで恥ずかしさがかぁっと空の中に込み上げてくる。
 上半身裸の空の躰に、擦り寄るようにさとり様の躰が近づけられてきて。ほとんど膨らみらしいものもないけれど、二人分の胸と胸とが直接に触れ合う。手意外の場所でこんなふうに密接にさとり様と触れ合うのは初めてのことで、互いの鼓動さえはっきりと聞こえる程の近すぎる触れ合いが、やっぱりどんなにも恥ずかしくて……そして嬉しかった。

 

「わ、わわっ」

 

 さらには、覆い被さるようにさとり様の躰がのし掛かってきて、空はベッドに押し倒されてしまう。
 つい先程まではさとり様のことを空が愛そうとしていた筈なのに、なんだか急に立場が入れ替わってしまったみたいだ。さとり様に一方的に攻めたてられて、空はたじろぐことしかできない。
 でも、こういうのもやっぱり悪い気はしない。さとり様は自分がペットになりたいと仰って下さるし、相手を自分だけのものにしたいという思いももちろんあるから、それはそれでとても幸せなことではあるのだけれど。……途方もなく愛せずにはいられない相手であるからこそ、独占欲以上に強く心に犇めく想いもあって。自分が相手だけのものになりたいと、愛する人の為だけの存在でありたいと希う心もまたあるからだ。