■ 136.「斯く熱めく - 23」

LastUpdate:2009/09/13 初出:YURI-sis

 空の目の前に差し出されてくる、さとり様の指先。今にも滴りそうなほどに湛えられた自分の愛液は見るに耐えなくて、すぐにでも目を背けたい衝動にも駆られるけれど。……それでも空は目をそらすことができなかった。だって空の愛液を纏わせた指先が、あろうことかさとり様の口元のすぐ傍にまで寄せられているからだ。

 

「お、お止めください、さとり様!」
「ふふっ、駄目です、止めません。……だって、空だけなんて狡いじゃないですか」

 

 そう答えると、空の静止も聞かずにさとり様は躊躇なく指先をご自分の口腔へと含んでしまう。
 秘所から滲み出た愛液。それは空には到底綺麗なものには思えず、自分から生み出された汚いものがさとり様を穢してしまったようで、空は言い得ぬ辛い心苦しさのようなものを感じずにはいられなかった。
 唯一の救いといえば、指先を含み味わうさとり様の表情に不快の色ひとつ浮かばなかったことだろうか。あらぬ方向を見定めながら、さとり様は静かに不思議そうな顔をその表情に湛えてみせる。

 

「……なんだか、掴み所のない謎な味がしますね」
「うう、汚いですから。その辺に、『ぺっ』して吐き出しちゃってください」
「嫌です。……味はよく判らないのですが、これを舐めていると不思議と強い空の存在を感じる気がするのです。惜しくて、吐き出すなんてできません」

 

 もごもごと、指先を加えたまま蠢くさとり様の口元。
 その中で、自分の愛液が味わわれているのかと思うと、恥ずかしいような居た堪れないような、何とも言えない居心地の悪さのようなものを空は感じてしまう。