■ 137.「斯く熱めく - 24」

LastUpdate:2009/09/14 初出:YURI-sis

「不思議、ですよね。空のものであれば私は本当に嫌な気持ちひとつ抱かず、喜んで口に含むこともできるのですが。なのに……自分のだけは、どうしても嫌な気がしてならないのです」
「……さとり様も、そう思われるのですか」
「はい、私も空と同じです。あなたが私のを舐めて下さっている間はずっと、申し訳ない気持ちばかりで一杯だったのですよ」

 

 確かに自分のを舐めるなんて、想像をするだけでも嫌なこと。
 けれど、さとり様の愛液を舐めるのはちっとも嫌でなんかなかった。指先に絡まるそれを舐めているだけでも、深くさとり様の何かを感じることができるような気がして嬉しい気持ちを感じていた程で。……もしも叶うなら、指に掬い取るのではなく直接に舐めてしまいたいぐらいだ。

 

「ちょ、直接は、さすがに汚いと思います……」
「ふぁっ!? ……す、すみません、変なことを考えてしまって」
「い、いえ。私が勝手に心を読んでしまっているだけですし……」

 

 疚しすぎる考え。さとり様に直接伝わり知られれてしまったことで、空は自己嫌悪のようなものを強く感じずにはいられない。
 好きになることを許されれば許されるほど、心は贅沢で貪欲になっていくばかりだ。初めはさとり様のお側にずっと居たいと、それだけを願っていたはずなのに。……今は、どんなにもさとり様のことを強く感じたいと、そればかりを心が深く深く求めたがって収まってはくれないのだ。

 

「……本当に。その通りだと思います」
「え?」
「心が貪欲になる、ということですよ。私も空と一緒にこの先も生きていければいいと、それだけを願っていたはずなのに……気づけばこんなにも簡単に、心は贅沢にあなたを求めずにはいられなくなる。――すみません、正直に申し上げてしまいますが。私も……直接に舐めてみたいと、そう思ってしまっているのです」