■ 140.「斯く熱めく - 27」

LastUpdate:2009/09/17 初出:YURI-sis

「いっぱい、空の匂いがします……」
「……そういうことは、思っても言わないで下さい。……恥ずかしいので」
「ふふっ、先程『なるべく心を隠さないように』と言ったのは、空ではありませんか」

 

 そう言って、さとり様はくすくすと小さく笑い声を零す。交わす言葉や、それと笑い声に伴う些細な吐息さえ、二人が上下に絡み合ったこの格好では空の秘所に届いて鋭敏に感じられてしまうから、なんだか変な気分だった。

 

「……ご不快ではありませんか?」
「はい、嫌では全くありません。好きな人の匂いに包まれていられるというのは、不思議と安心するものなのですね。それに、もうひとつ」
「もうひとつ、ですか?」
「ええ。安心するのともうひとつ……この匂いを感じていると、凄く欲情させられる気がします」
「よ、欲情ですか……」

 

 言われて一瞬、恥ずかしい気持ちになって。けれど、そういうものかもしれないとも思う。
 実際、空もまたさとり様の秘所を目の前にして、その匂いに包まれていると。深い安心感と共に欲情の酩酊らしきものを感じずにはいられないからだ。酷く心が落ち着いて静まるのに、その反面荒々しく猛りそうになる心も同時にあるというのは、なかなか不思議な心地だった。

 

「えっと……しちゃいますね、さとり様」
「……はい。私も、しちゃいますね」

 何を、とは言わなくても。こんな格好でやることなんて、ひとつしかない。