■ 142.「斯く熱めく - 29」

LastUpdate:2009/09/19 初出:YURI-sis

「はあああっ……! さ、さとり様ぁっ……!」

 

 怖いぐらいに愛しすぎる名前を呼ぶ。
 苛む指先、執拗な愛撫。絶え間なく与えられ続ける快楽の刺激は少しだけ辛くもあるけれど、その総てを与えて下さっているのが他ならぬさとり様なのだと思えば、空にはそれを幸せに思うことしかできない。
 包皮をゆっくりとずらして、唾液を纏わせた舌先で転がすように陰核を愛撫する。ひたすらに過敏さを増していく空の性器を、一心不乱に苛まれる行為さえ。――少なくとも今は、空の為だけにさとり様が夢中になって下さっているのだと思えばどうして嬉しくない筈があるだろうか。常日頃からさとり様のことだけを考えて止まない虜である空のことを、この瞬間だけは誰よりも強く見つ返して、そして感じていて下さっているのだから。

 

「あ、ああああああああっ!!」

 

 絶頂の瞬間はあまりにも唐突に訪れた。舌先に遊ばれる陰唇や膣口よりもずっと奥、お腹の下辺りにきゅうっと堆積していた何かが、たちまち爆ぜるように霧散させられてしまって。背筋からつま先までがピンとしなやかに張り詰めて、小刻みな躰の震えが止まらなくなる。
(い、いっちゃった……)
 弛緩と共に果てゆく躰。その感覚に浸りながら……敬愛するさとり様に、それも舌だけで達させられてしまっただなんて。たったいま確かに起こったことであるはずなのに、どこか嘘みたいに現実感が沸かなかった。
 けれど違いない現実であるから、空の秘所にはいまもさとり様が舐めて下さった感覚が残っている。……きっとこの先、さとり様との逢瀬を夢を見てしまう際にはいつでも明瞭に思い出してしまえる程。空の記憶に、忘れられないぐらいに深く残るのだろう。