■ 144.「斯く熱めく - 31」

LastUpdate:2009/09/21 初出:YURI-sis


「さとり様」
「はい?」
「え、えっと……私はその、お陰様で最後まで気持ちよくして頂きましたが。さとり様は、その……途中ですよね?」

 

 空がそう訊ねると。さとり様は思い出したように、ゆっくりと頬を紅色に染めながら。
 それでも空の目を見つめて、しっかりと静かに頷いて下さった。

 

「……確かに途中まででしたね。もしかして、続きをして下さるのですか?」
「は、はい。もちろん、さとり様がお嫌でなければ、ですが……」
「嫌でなどある筈がありません。私は空が求めたり与えて下さるのであれば、それを決して嫌だと思うことはありませんから。……でも、そうですね。でしたらひとつ、お願いしても宜しいでしょうか?」
「お願い、ですか?」
「ええ」

 

 こくん、と頷いてさとり様は応えてみせる。
 恥ずかしげに俯くその頬がより色濃い紅に染まっていて。何かえっちなことを期待していらっしゃるであろうことが、何となく空にも伝わってくるような気がした。

 

「先程は空が下になって下さいましたが。今度は、私の方を下にして欲しいのです」
「それは構いませんが。……重いかもしれませんよ?」
「はい、空の重さを感じさせて欲しいのです。……もっと言うなら、あなたの躰で私を組み敷いて。私が抵抗できないようにして、強引に抱いて欲しいのです」
「て、抵抗できないようにして、って……」

 

 身動きを封じて、強引に抱く、だなんて。
 さとり様が口にしたそれは、あまりにも被虐的な要求ではないだろうか。

 

「……被虐的ですか。あまりそう考えては居なかったのですが……なるほど、そうなのかもしれません」
「あ、す、すみません。変なことを考えってしまって……」
「いえ、空がそのように思うのも無理ないことだと思いますし。……確かに、もしかすると私は、あなたにに苛められたいとさえ思っているのかもしれませんね」

 

 あっさりと肯定されたことで、却って混乱させられるのは空のほうだった。
 空にとってさとり様は本当に特別な方で。……苛めるだなんて、想像さえできないことなのに。