■ 147.「斯く熱めく - 34」

LastUpdate:2009/09/24 初出:YURI-sis


「とても熱い、のですね。……空の唇は」
「……さとり様の唇も、十分熱かった気がしますが」

 

 やがて唇が離れ合ってから、互いにそんなことを言い合ってみる。
 結局は二人共がそれぞれに熱を抱えていたのだろう。触れ合わせた先、唇と唇とが繋がり合うその空間に生まれた膨大な熱量も、二人分の熱が相俟った結果なのだと思えば得心がいくように思えるからだ。
 もう一度、空のほうから顔を寄せる。ベッドに組み敷かれているさとり様には逃げ場もなく、為すがままに空の唇を受け入れてくれた。空が閉じるよりも先にさとり様の方から瞼を閉じてくれたから、心を読めない空にだってそのお気持ちは簡単に察することが出来て。同じ気持ちでいて下さることの嬉しさが、改めてじんと胸に沁みた。

 

「……空は、キスが好きなのですね」

 

 先程よりも少しだけ長めのキスを終えて。呼吸を整えながら、さとり様はそんな風に言ってみせる。

 

「大好きです。だって、さとり様とですから」
「そ、そういうことを面と向かって言わないで下さい。……言われる私の方が、照れてしまいます」
「……すみません。私にはどのみち、嘘も隠し事もできないもので」

 

 言葉にしなくても。結局は、想いが伝わる。
 強い想いはそれだけ大きな心の声となって聞こえるのだと、いつかの日にさとり様が教えて下さったけれど。だとしたらいま空が上げている心の声も、随分と大きな声になってしまっているだろうから。さとり様にそれが、伝わらない筈ない。

 

「……そうですね。とても大きくて、力強くて。も心を揺さぶられる真っ直ぐな声が、ちゃんとこちらにも届いていますよ」

 

 ご自身の胸元を指さしながら、さとり様が嬉しそうにそう囁いて下さる。
 もちろんその言葉に、それ以上に嬉しい気持ちにさせられるのは空のほうなのだけれど。