■ 154.「斯く熱めく - 41」

LastUpdate:2009/10/01 初出:YURI-sis


 自分の魅力なんて、自分自身で知っておく必要なんて本当は無いのかもしれなかった。自分で気づくことが出来なくても、他の誰かが気づいてくれるかもしれないから。まして愛する人が自分の魅力を知って居て下さるのであれば、それ以上に望むものなど果たしてあるだろうか。

 

「――幸せです、さとり様」
「私もですよ、空。あなたが私の傍に居て下さるから」

 

 小さなベッドの中で身を寄せ合う。空よりずっと小柄なさとり様の躰は、抱き包むようにすれば簡単に空の腕の中にも収まってしまいそうだ。稚くて華奢な躰。けれど空よりもずっと聡明で、怜悧な瞳。――私はこの方の魅力を誰よりも知っていて、きっと誰よりも特別で強い想いを今までも、これから先も抱き続けていくのだろう。

 


  『私にも、空の為に生きることを許しては下さいませんか』

 


 愛し合う前にさとり様が言って下さった言葉が空の脳裏に蘇る。僅か数時間程度しか経っていない筈なのに、不思議とその言葉が酷く懐かしいものであるかのように感じられてしまうのはどうしてなのだろう。
 さとり様が私の魅力を知っていて、私の傍で生きることを選んで下さる。空もまたさとり様の持つ数多の魅力的な部分を理解していて、許される限りそのお側で生きたいと希う。
 どちらがどちらのペットだとか、もしかしたら結局はそんなのどうでもよいのかもしれなかった。私達はただ互いが相手の傍に居たいと切望していて、その為に『恋人』という絆以上に便利な関係を模索しているだけなのかもしれない。

 

(……いっそ結婚してしまえば、ずっと傍に居られるのかも)

 

 頭の隅でふと想った、その考えさえ。
 あるいはすぐ隣で静かに息衝く、最愛の人に伝わっているのだろうか。