■ 180.「持てる者の檻」
実際、可愛すぎてならなかった。愛しすぎてならなかった。
普段から霊夢のことを可愛いと思わないわけではないし、それどころかいつだって意識さえしているのだけれど。愛している行為の最中ほど、相手が可愛く思える瞬間というのも無いような気がするのだ。
愛することと、愛されること。どちらがより深く相手に溺れることができるのかといえば、それは勿論愛される側のほうなのだけれど。それでも魔理沙は、霊夢に愛して貰うことと同じぐらい、こうして霊夢のことを愛することが好きでならなかった。小さな躰で快楽に乱れる霊夢は行為を何度経てきても褪せることのない可愛さがあったし、そうした可愛い霊夢をごく近い距離で見ていると、どんなにも霊夢のことを好きな自分の心を何度でも再確認することができるからだ。
「ぁ、あっ! ん、っく、ぁ……ふぁ、あ、あぁっ……!」
容易く霊夢を追い詰めていく指先。
霊夢が魔理沙のこと以外を考えられなくなるのと同じ勢いで、魔理沙もまた可愛くて愛しい霊夢のこと以外が考えられなくなっていって。
「はあああぅ、ん! は、ああああっ……!」
やがて絶頂を迎えた霊夢と同時に、魔理沙の中でも何かが爆ぜる感覚があった。
ぴんと弓なりに反った背中、きゅっと瞑った瞳。魔理沙の指によって、気を遣ってくれた霊夢の表情や仕草ひとつに至るまで、どうしようもなく可愛くて。
だから――少しだけ残酷なことと知りながらも。魔理沙は、もっと霊夢を求めたいと思う気持ちを、もっともっと可愛い霊夢を見たいという気持ちを我慢できなくなってしまう。
「ぁぅ……! ん、ぅ……!」
静かな、けれど辛そうな喘ぎが霊夢の喉から漏れる。
達したばかりの躰では、それも無理ないことで。辛いことだと知りながら、けれど魔理沙は執拗に霊夢の性器を責め立てて止まない。
もしも私達が普通の恋人なら、きっと性愛の余韻に浸りながら愛の言葉でも囁き合うのだろうか。――だけど私達の関係は恋人ではなく、より乱暴で、より身勝手な願望の結晶でできているから。
――相手を自分のものにしたい。或いは、自分が相手のものになりたい。
そんな我儘過ぎる願いを満たす為には、普通の性愛なんかでは全然物足りないのだ。