■ 184.「誠実と純真」

LastUpdate:2009/10/31 初出:YURI-sis

「も、椛っ」
「……駄目?」
「駄目じゃないけど、駄目じゃないけど、でも」

 

 抱き締め合う格好から一転、椛はそのままにとりのほうへ倒れ込むようにしながら彼女の躰ごとベッドの上に押し倒す。無防備なにとりの大事な部分に指先でちょこんと触れると、にとりは酷く狼狽してみせて。
 予想外のにとりの反応に椛が躊躇を覚え始めていると、にとりは混乱しながらも少しの間考えるような素振りをしてみせてから、やがて何かに得心するかのように頷いてみせた。

 

「……そうだよね、何も駄目じゃないよね。うん、椛の好きに触っていいよ」
「本当にいいの? 無理しなくてもいいんだよ?」
「うん、無理なんてしてないから。積極的な椛にちょっとびっくりしちゃっただけで……椛に触られるのは、きっと私も嫌じゃないから」

 

 本人から許可を得たことで、椛の指先はもう一度探索するようににとりの下腹部を這う。
 全体的に湿気を帯びた下腹部の中でも、とりわけ濡れそぼつ場所があって。にとりの上に自分の躰ごと覆い被さっている今の体勢では直接に見確かめることはできないけれど、幾重にも触れて確かめる柔らかな襞の感触と共に探り当てたことを椛は確信する。

 

「んぅ……!」

 

 襞と襞との間に指先を一本だけ差し込ませていくと、にとりの口からは他の何とも形容しがたい艶っぽい喘ぎが漏れ出てきた。
 許可を貰っているからにとりの声に躊躇こそ覚えないとはいえ。何だか焦りの儘に求めてしまえば繊細な彼女の秘所を傷つけてしまうような気がして、努めて慎重に椛は指先を少しずつ彼女の躰の中に埋めていく。

 

「あ、あ、ぁ……」

 

 膣口から進入していく次第に従って漏れ出される嬌声は、まるで麻薬のような甘さで椛の脳を蕩けさせていく。にとりの躰深くに指先が及んでいく程、彼女が躰の裡に溢れさせている滾りの深さを椛の指先は探り当てて。
 包み込む夥しい熱の奔流の総てが私に向けられた感情そのものなのだと意識してしまうと、少なからず怯むような心も椛の中には生まれてしまうけれど。でも矢張りそれだけ真剣に想われているのだと感じられることは、純粋に嬉しいことでしかないのだった。