■ 186.「泥み恋情」

LastUpdate:2009/11/02 初出:YURI-sis

「悪戯がいいわ」
「あ、即答なんですね」

 

 ハロウィンのお約束通りに呼びかけた問いかけに対して、答えて下さったレミリアお嬢様の反応はリトルにもある程度予測できていたものでもあったので。素直にお菓子をくれるような方でないことは百も承知だけれど、あまりにも予想通り過ぎるその答えにリトルは苦笑を隠しきれない。

 

「別にお菓子のほうがいいのなら、あげても構わないのだけれどね。咲夜に今すぐ準備させればいいだけの話だし」
「あはは……。それはそれで、お嬢様らしい答えですね」
「でもね、お菓子の用意が今すぐ可能なのだとしても私は悪戯のほうがいいのよ。……そうでもしないと、あなたのほうから積極的になってくれることも、なかなか無いでしょう?」

 

 くすくすと可笑しそうに、そして嬉しそうに微笑むお嬢様の笑顔。
 その笑顔に許されるように。リトルはそっと椅子に腰掛けるお嬢様の後ろに回り込んで、その耳元の傍にまで顔を寄せてみる。

 

「――つまり、私はいま期待頂いているということでしょうか」
「理解が早くて助かるわ」
「では、失礼して」

 

 リトルが襟首に口吻けると、温かいな吐息がお嬢様の口から漏れ出た。
 キスを寄せる傍らでは、そっと背中の下辺りからお嬢様の服の内にリトルは自分の手を差し入れていく。お嬢様の部屋着の内側で、さらに下着のシャツの内側にまで手を忍ばせていくと、お嬢様の躰の温かさが直に伝わってくる。

 

「……小さい胸なんて、触っても面白くないでしょうに」

 

 リトルが愛おしげに乳房を弄ると、すこし悪態めいてお嬢様はそんな風に言ってみせて。もちろん、その言葉の裏に隠された真意が判るから、リトルはただ嬉しい気持ちの儘に答えてみせた。

 

「好きな人の胸ですから、十分面白いですよ」
「……そう。それならいいわ、好きになさい」
「はい、好きにしちゃいますね」

 

 お嬢様が嬉しさを答えながら口にして下さった『好きにしなさい』の言葉が、たちまちリトルの心さえどんなにも嬉しい心地にしてくれて。
 吸血鬼と悪魔の私達だけれど。互いを愛しく思える私達は、確かに恋人同士だった。