■ 190.「群像の少女性」
「んっ……!」
乳房だけではなく、先輩の愛撫が桃子の下腹部にも及んでくると、さすがに堪らず声も漏れてしまった。
桃子の顔色を窺っておろおろと躊躇う先輩。そんな先輩に、けれど桃子はふるふると首を左右に振って否定する。決して嫌だから声を上げた訳じゃなくて、ちょっとびっくりして声が漏れてしまっただけなのだから。こんなことで先輩に躊躇ったりなんてしてもらいたく無かった。
「……辛くなったらいつでも言ってくれ」
「大丈夫っす。辛く、だなんて」
なるわけがない。先輩がどれほど乱暴に桃子のことを求めたとしても――他ならぬ先輩の望みである以上、辛くなんて絶対に感じない自信が桃子にはある。
今まで以上の繊細さで桃子の秘所に這わされてくる先輩の手のひらと指先。それはとても拙く、軽度の愛撫である筈なのに。
「ふぁ、ぁ……っ!」
拙い指先なのに――馬鹿みたいに気持ちいい。
思わず漏れ出てしまった喘ぎの声に、桃子自身びっくりしてしまう。先輩が一瞬驚いたように桃子を見つめてきて、感じたあまりに声を漏らしてしまった直後だったものだから、表情を見られるのが恥ずかしすぎて桃子のほうから顔を背けてしまうけれど。
嬌声の声色からか、先輩にも『辛くて』声を上げたのではなく『気持ちよくて』声を上げてしまった事実が伝わったみたいで。やがて少しだけ嬉しそうに微笑みながら、先輩は再度愛撫の指先を桃子の躰に這わせてきてくれた。
「ひゃ、ぅ……! ぁ、ぁ、ぁ……」
先輩を想って自慰をしたことぐらい、何度だってある。先輩への想いを募らせる程に頻度は増えていったし、多い時には毎晩のように自分の躰を苛んでいたことだってあるぐらいだ。
だから自分の躰の気持ちいい個所も、自分を追い詰めていく方法だって、桃子は十分に知っているはずだった。それなのに……今まで幾度となく責め立ててきた自分の指先とはまるで違う、先輩の優しくて拙い指先が。けれど桃子自身今まで感じたことがない程の、途方もない気持ちよさを容易く与えてくるから不思議だった。
「んっ、ぁ、ぁあっ……! ひぁ、ぁあああ……!」
断続的な喘ぎは、最早桃子の意志でさえ止めることはできない。
それぐらい先輩の指先は、抗いがたい快感ばかりを桃子の躰に植え付けてくる。