■ 192.「群像の少女性」

LastUpdate:2009/11/08 初出:YURI-sis

 モモがバッサリ『下手』だと言い切ってくれたのは、却って有難いことであるのかもしれなかった。
 ぎこちなく彼女の躰を触れ確かめながらでなければ愛することもできない私が『下手』であることぐらい、言われるまでもなく私自身意識できてしまうことでもあるから。仮初めに優しい嘘の慰めを貰うよりも、下手だと言い切ってくれた方が幾らも救われるというものだ。
 それに……モモはこんな私の『下手』な愛撫を、気持ちいいと言ってくれる。モモの吐息、身動ぎ、そして嬌声。ゆみの愛撫に返してくれるモモの反応総てが、それが嘘でないことを物語っていてくれるから。真実ゆみの指先に感じてくれているモモの気持ちが伝わってくるだけに。私が情けないぐらいに『下手』なのだとしても、嬉しすぎて落ち込む暇さえない。

 

「……可愛い声だ」
「かわっ……!? そ、そういうこと言わないで下さいっす!」

 

 思わず漏れ出てしまった本音の儘の言葉であったのだが。ゆみが吐露した感想に、過剰とも思えるぐらいにモモは大きな声で反応してみせた。
 モモの反応から察するに何かつまらないことを言ってしまったのだろうかと、漏らした言葉を振り返るとともに反省の気持ちを抱き始めていると。不意に、真っ赤に染まりきったモモの恥ずかしそうな表情を見つけてしまって、ゆみはハッとする。

 

「済まない、恥ずかしかったのだな」
「……そりゃもう、穴があったら入りたいぐらいっす」
「だが、それが私の正直な気持ちなんだ。モモの可愛い声が私は好きだ。だから……聴かせて欲しい」

 

 そんなことを言えば、モモをもっと困らせてしまうだけなのに。
 判っていてもゆみは自身の望みを言わずに押し込めることができなかった。モモの可愛い声は、ゆみの脳に何か甘い痺れを抱かせてきて。気持ちよさから上げてくれるモモの声に合わせて、ゆみもまた同じぐらいに気持ちよくなれてしまうような……そんな魅惑を持っているものであるから。

 

「い、言われなくても……我慢できないから、出ちゃうと思うっす……」

 

 かあっと、耳までも真っ赤に染めながら。
 そう言ってくれるモモの言葉が、馬鹿みたいに嬉しかった。