■ 17.「素敵な生活」
天子の躰に隠れていた最も弱い秘密の場所を、アリスの舌先はゆっくりと転がしてみる。周囲の包皮との隙間を確かめるように舐めたり、そのものの膨らみや弾力を確かめるかのように愛おしげに舐めてみたりする。
「……ぁぅうっ! ひゃ、ぁ……ぅ、んぅっ……!!」
上手く呼吸ができないのか、天子が上げる嬌声は酷く息苦しそうにも聞こえるけれど。……それでも、アリスは責める舌先の愛撫を止めようとは思わなかった。きっと乱暴にしかできないアリスを受け入れてくれたのは他でもない天子自身で、だから……彼女がアリスに甘えてくれるように、アリスもまた天子に甘えたいと思うからだ。
達した直後を連続で、それも一番辛い部分を責められているのだから、これで辛くない筈がない。アリスの視線には秘所しか捉えられてはいないから、天子の表情を見確かめることができないのが残念だったけれど、それでも荒ぶる息遣いと嬌声とでその苦しさはありありと伝わってくる。けれど……それでも、天子は決してアリスに「やめて」とは言わなかった。
もしも天子から「やめて」と言われたなら、それが無意識のうちに吐き出された言葉であるとしても、アリスはすぐにでも行為をやめるつもりだった。一度熱中してしまえばなかなか落ち着けない自分の性分を理解しているからこそ、もし天子が「やめて」と一度でも漏らすようなことがあれば、その時点で全部やめてしまおう――自己暗示に近い形で、アリスは自分自身にそう予め言い聞かせていたのだ。
もちろんその事実は天子には伝えていない。なのに天子は、どんなにも苦しそうなのに決して「やめて」とは口にしなかった。……まるでアリスの心の裡を、全部見透かしているみたいに。
見透かされているのなら、それでもいいとさえ思えた。アリスの疚しい心を総て見透かした上で、それでも健気に天子が答えようとしてくれているのだとしたら。これほど嬉しいことがあるだろうか。
(私、本当に天子のことが好きなんだ……)
改めてアリスは、そんなことさえ痛感する。
「ふぁ、ぁ……!! は、ぁ、ぅっ……ぁ、はああっ……!!」
昔は性的な情事なんて、誰かと愛し合う上での余興のようなものだと思っていた。まして何かしらの意味を持ちうる男女の交わりとは違い、女性同士であればなおさら、それは戯れのようなものに過ぎないのだと。
(――でも、違うんだ)
こうして経験を得ることができた今だからこそ、アリスはそう確信することができた。性愛は愛し合うお互いの気持ちを確認する為に、きっと必要なことなのだと。
(だって……こんな恥ずかしいこと、愛してる人とじゃないとできるはずない)
愛していればこそ求めたくなるものがある、応えたくなる想いがある。自分の体を全部許して相手に委ねてしまうことも、許された相手の躰を激しく求めることも、情欲に塗れた行為はどちらも心は怖いぐらいに裸になる。心を曝け出すのは恥ずかしいことで、そして何より怖いことだから。こんなこと、愛している人とでなければ求め合うことなんて、できはしないのだ。