■ 18.「素敵な生活」

LastUpdate:2009/01/18 初出:YURI-sis

「ぅ、ぁ……!! ぁ、ぁあ、あああっ……!!」

 

 経験したことはないけれど、一度絶頂に導かれたまま弛緩されることを許されなかった躰は、再度の絶頂へと導かれるのも早いのだろうか。天子の上げる悲鳴にも似た声は、もうつい先程絶頂を迎える直前のものと変わらない程に深く追い詰められているようにアリスには聞こえてくる。
 そうした変化が確かなものとして解る程に、天子の声は何よりも確かなものとしてアリスの耳には聞こえていた。響く荒い吐息と、断続的に上がる嬌声。それとすぐ傍から聞こえる陰核の傍に纏わった蜜が奏でる水音。何しろこの総てが、そのまま今二人きりの世界の中で確かめられる音の全部なのだから。
 舌の触覚と味覚で確かめる、弾力に満ちた天子の感触と蜜の味。その乱れる様相を捕らえるうちに、逆に囚われそうにもなる視覚。陰核のすぐ傍で、蕾から絶え間なく溢れてくる天子の匂いを感じる嗅覚。他の誰にさえきっと天子も聞かせることがない、荒々しく悩ましい息遣いと嬌声を感じる聴覚。――アリスの持ちうる五感総てが、今はただ天子の存在と魅力を確かめる為だけの器官へと特化されていた。

 

「はああん、っ……! ふぁ、あっ!」
「……ん、は、あぁっ……ぁ、ぁああ……」

 

 気付けば責められる側の天子からだけではなく、責める側であるアリスのほうからも少なからず声が漏れ出てしまっていて。実際その声に気付くと同時に、アリスは声が漏れてしまう程に感じてしまっている自分のことに気付かされてしまう。
(えっちなことって、する方も気持ちいいんだ……)
 アリスの舌先と天子の陰核、接点といえば本当にそれぐらいなのに。けれどアリスが舌による愛撫で天子の秘部を責めれば責めるほど、その気持ちよさは少なからずアリス自身にも返ってくる。
 愛しい人が、私のせいで乱れてくれるのが嬉しい。愛しい人が、私の為に声を上げてくれるのが嬉しい。そうした多幸感が、あるいはアリスにも彼女と同じような快楽を導いてくるのだろうか。
 実際、苛みの舌につられて天子が上げてくれる嬌声は、アリスの脳髄に突き刺さるかのように、易々と躰の裡の深い場所にまで突き刺さって浸透してくる。今にも追い詰められそうな、天子の上げるきれぎれの声。その声に絆されるかのように、どこかアリスにも今にも追い詰められそうな感覚があった。

 

「ふぁ、ぁあああ……!!」
「ぁ、はっ、ぁあ……。ん、ぁぅ……!」

 

 導かれるとともに発せられる、二人分の声。躰の中で大きくうなっていた何かが、罅ぜる感覚があって。
 疲れのままに弛緩していく感覚が、アリスの躰中を支配していく。……それは、達したときに得ることができる疲労感と、全く同一のもののように感じられた。
(私も、いってしまったの……?)
 ――そんなことってあるだろうか。そうは思いながらも、疑問のままにアリスは自分のスカートの中へと指先を導いてみる。
 上からそっと触れてみる自身の下着の感触は、果たして天子のそれに負けないほどの蜜に満たされていた。