■ 141.「斯く熱めく - 28」
舌全体を使って陰唇の襞をなぞるように舐め取ると、その都度に空の躰の上でさとり様の躰が幾度もぴくりと身動いで応えた。もちろんさとり様もやられるばかりではなく、ちろちろと優しい舌遣いで秘所を責め立てて来て、空もまた繊細な愛撫が与えてくる刺激の前に幾度も躰を揺さぶられずにはいられない。
「はっ……ぁ、あ……!」
「ん、ぅ……!」
二人分の嬌声が広くはない部屋の中で交錯する。さとり様の秘所しか見えない今の格好ではさとり様の声はどこか遠くにしか聞こえないけれど、代わりに喘ぎに混じる吐息は直接に空の敏感な所に伝わってきて。だから声が微かにしか届かなくても空の舌による愛撫にさとり様が十分に感じて下さっていることはよく伝わってきたし、さとり様の方にも同様に空がこんなにも感じさせられてしまっている事実が克明に伝わってしまっている筈だった。
舌を這わせれば這わせるほど、さとり様の陰部はよりとろとろに柔らかくなって、同時に尽きることなく蜜を滴らせてくれて。甘露にも似た甘すぎる蜜、それを求めて止まない飢えにも似た感覚の儘に、夢中になりながら空はさらに舌を這わせていく。
「ふぁ! はぁ、ん……ぁぅ……!」
けれど夢裡に誘うのも性愛なら、夢裡から現実へ引き戻すのもまた性愛のそれに他ならなかった。さとり様が与えて下さる繊細な愛撫は慣れてくるに従ってより大胆に、そして勢いを伴ったものになっていって。刺激がより大きなものへ変化するほど、空もまたより顕著に快楽に揺さぶられることになる。
「はぁ、ぁあ……ああ! あぅ、んっ……!」
あまりの快楽に何も考えられなくなって、空からは何もできずに殆どさとり様の為すがままになってしまうと。お互いがお互いを責めることで成り立っていた均衡が崩れて、攻撃は完全に一方的なものになってしまう。
空のほうからも責め返さないといけないと判っているのだけれど、こうも深い快楽の酩酊に揺さぶられていては、首を起こしてさとり様の秘所へ顔を近づけることさえ儘ならなくなってしまう。そうなればもう状況は決してしまったようなもので、空の攻撃から解き放たれたさとり様の愛撫はより強固で鮮烈なものとなって、敏感になりすぎている空の秘所にさらなる追い打ちを掛けていくばかりでしかなかった。