■ 151.「斯く熱めく - 38」
「……大好きです、さとり様」
なおも指先を淫らに蠢かせながらそっと耳元に囁くと、空の愛の言葉に一際大きくさとり様の躰が打ち震えて応えてくれる。さとり様の喉からは随分と前から喘ぎ混じりの声しか吐かれてはいないのに、空の囁きを嬉しいと感じて下さっていること、そして空の囁きにそのまま答え返してくれるような愛の言葉までもが空の心には届いてくるように感じられて。――まるで、私もさとり様の心が読めるようになってしまったような錯覚さえ感じる。
「はぁああっ! あぁ、ぅ、ああぁああああぅ……!」
一際強い嬌声が部屋の中に響くと同時に、空は手のひらに熱い飛沫を感じる。組み伏せているさとり様の躰が空のすぐ下で弓なりに撓み、やがて力なくぐったりと果てた。達されたのだ――そのことは、空にもすぐに理解できて。私の指先に感じて下さって、その快楽で一杯になって下さったのだと思うと、何にも代え難い胸に迫る嬉しさがあった。
絶頂の余韻に小刻みに震わせているさとり様の躰に、空は静かにキスの雨を降らせていく。首元に、鎖骨に、乳房に、お腹に。時には少しだけ強く吸っては、さとり様の躰に薄い痕を残すようにして。もしかすると私は、愛し合えた証をさとり様の無垢な躰に残しておきたいのかもしれなかった。
「気持ちよかった、ですか?」
空は、さとり様の瞳を真っ直ぐに見つめながらそう訊ねてみる。
それはつい先程、空が先に絶頂を迎えた直後にさとり様に訊ねられた言葉と同じもの。直接的に訊ねられるのはあまりにも恥ずかしすぎることで、その時には空もさとり様から視線を外してしまったものだけれど。
さとり様は視線を逸らすことなく。代わりに少しだけ拗ねたような顔をしてみせながら。
「……気持ちよかったですよ」
それでも、空と同じように正直に。そう伝えてきてくれたのだった。