■ 191.「群像の少女性」

LastUpdate:2009/11/07 初出:YURI-sis

「えっと、その……気持ちいいか?」

 

 快楽のあまりにがくがくと躰が震えて止まらない。そんな桃子に、不意に先輩は疑問を純粋に問うかのような口振りでそんなことを言ってみせる。

 

「そういうのは訊かないで欲しいっす……」
「そ、そうだよな。……済まない」
「……恥ずかしいので一度だけしか答えられませんが。と、とっても……気持ちいいっすよ」

 

 答えるのはあまりにも恥ずかしいことではあったけれど。先輩も指先で桃子を踊らせながら、きっと不安に苛まれていらっしゃって、その余りに問わずにはいられなかった言葉なのだろうから。
 必死に恥ずかしさを堪えながら、桃子はそう正直に答える。
 実際、気が狂いそうな程に気持ちが良かった。今までの自慰行為では感じたことの無い程の、夥しくて鋭い快感に、もう桃子は容易く絡め取られてしまっていて。会話をしているせいか先輩の指先は緩慢とした動きに今は抑えられているけれど、そんな焦らすような愛撫にさえ精一杯に努力しなければ堪えきれない程に。それほど、桃子はもう極限まで追い詰められてしまっている。

 

「良かった……。あまり上手くできている自信が無かったものでな」

 

 安堵するように先輩が漏らした言葉。
 その言葉があまりに面白くて、桃子はくすくすと笑みを零してしまう。

 

「……多分、先輩はヘタっすね」
「う、やっぱりそうか……?」
「はい、多分間違い無いっすね。……でも、私にはおかしくなっちゃいそうなぐらいに気持ちいいっす。だって、それが先輩の指先だから」

 

 自慰では感じ得ない、至高の快楽。
 その正体という物があるとするなら、それは間違い無く――先輩に愛されているという事実に他ならない。
 結局は技巧的なことなんて、問題じゃないのだ。だって桃子が愛しているのは先輩だけで、その先輩が指先で苛みを課しながら桃子のことをこんなにも愛して下さっているのだから。例えぎこちない指先であっても、誰より愛されたい人の指先に弄ばれているという事実こそが、最上の刺激と快楽に変わってしまうから。

 

「そうか。……私なんかでもモモを気持ちよくできるのなら、それは幸せなことだな」
「そ、それを言うなら、先輩に愛されてる私の方が、ぁっ……! ぁ、ぁ……も、もっと、幸せっすよ……!」

 

 徐々に力を取り戻してきた愛撫の指先に、桃子はまた少しずつ追い詰められていく。
 追い詰められながらも言いたい言葉はきっと言えた筈だし、桃子の気持ちは伝わったはずで。桃子の下腹部を先輩は今まで以上に激しく責め立てながらも、嬉しそうに桃子に微笑み掛けて下さっていた。